(2)鞍作鳥の鳥は寺(トリ)に由来する(仮説) 浜田裕幸 2016年4月
鞍作鳥は飛鳥時代を代表する仏師であり、また寺院も建築している。
鳥は止利とも記されている。その祖父は司馬達等、父は鞍作多須奈である。
司馬達等
『扶桑略記』によれば「522年に渡来したが、大和国高市郡坂田原に堂を建て、仏像を安置して礼拝していた」とある。
達等の渡来集団内では、この堂は古代朝鮮語の 뎔、tjəl と呼ばれたであろう。
書紀によれば、達等は蘇我馬子に仕え、仏舎利を献上している。
鞍作多須奈
司馬達等の子で、書紀によれば用明天皇が危篤の際、天皇の為に出家修道し、また丈六仏像および寺を造り奉らんことを奏した。
坂田寺は彼の造営とされる。
後に出家し、徳斉法師と称した。日本最初の僧といわれる。
鞍作鳥(止利)
鞍作多須奈の子で、書紀によれば、推古天皇十三年(605)天皇は鞍作鳥に丈六の仏像を造らせた。
翌年金銅仏は完成し、飛鳥寺の金堂に搬入することになった。しかし像が高すぎて扉を壊さないと入らない。
このとき止利の工夫でうまく金堂内に安置できたという。
止利は法隆寺金堂釈迦三尊像も制作した。光背の裏に刻まれた銘文に司馬鞍首止利佛師に造らせたとある。
このように、達等・多須奈・鳥の三代はわが国の仏教創生期に大きな貢献をしている。
私は、鞍作鳥(止利)の名前が寺を意味する古代朝鮮語 뎔、tjəl
に由来すると考えている。
とすれば彼等の集団から、寺に対する倭語「トリ」が発生した可能性がある。